V氏の『麻雀漫画50年史』が気がついたらkindle版が出てたのでちまちま読んでたのだけど、ようやく最後まで読んだ。いやあ面白いもんです。
とにかく全方面にわたって詳細で、分量も多く情報量が多く、著者の熱量が高い。様々な当事者たちにも実際に話を聞いていてまとめている大変な労作でもある。全体的な流れも抑えつつ、雑誌の勃興や発展、終焉なども追い、作者や作品単位でも個別にピックアップして紹介をしていてとにかくすごい。メジャー作や王道的な作品からトンチキな珍品まで紹介しているのもすごい。
それでいて、50年を通して核となる何か、みたいなものは全くない本でもある。これは著者のポリシーとしてあえてそうしているという話であり、前書きでも後書きでも強調されている。だからと言ってプレーンな語り口ということはなく、著者が偏愛するタイプの漫画とそうでない漫画では文章がまるで違ったりするが、それはそれとして全体を通した視座みたいなものは特にない。そういうのを求める層には向かない本だろうとは思う。では誰に向いている本かというと……よくわからない。だが、読んで面白いのは間違いない。膨大な作品が紹介されており、そのリアルタイム世代には色々と思い入れのある読み方もできたりみたいな楽しみ方はあったりするのかも。
そして読めば読むほどに実感したのが、自分は本当に麻雀に全然興味がないなあ、ということだった。もちろん麻雀をやったことはあるけど、ほぼ何も知らないし全く興味がないレベル。なので麻雀漫画も全く読まないというわけでもないが、読んでもストーリーとかはともかく実際の対局シーンの中身はそれほどというか全然興味が持てないんだよな。多分麻雀漫画を楽しむための基礎みたいなものがない。「酵素がない」というやつ?である。なので「昔の麻雀漫画は、実際に打つことができなかった時の代償行為」みたいな本書の話は目から鱗で、そんな楽しみ方もあったものなのかとびっくりもした。
そんな自分でも本書は読んで面白いのであるけれど、麻雀漫画に興味ある人が読むべき本かなと思います。