小川一水『時砂の王』
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西暦248年、不気味な物の怪に襲われた邪馬台国の女王・卑弥呼を救った"使いの王"は、彼女の想像を絶する物語を語る。2300年後の未来において、謎の増殖戦闘機械群によって地球は壊滅、さらに人類の完全殲滅を狙う機械群を追って、彼ら人型人工知性体たちは絶望的な時間遡行戦を開始した――
ふつうにエンターテインメントしてた。小川一水は朝日ソノラマではこういう作品をよく書いているけど、ハヤカワでは少し珍しい気もする。……ん? ソノラマ? ……という邪推はさておき、わたしはどちらのタイプの小川一水も好きで、楽しく読めた。
歴史改変ぶりも楽しいし(剣卓国てのがなんなのかは説明されるまでわかりませんでしたよ)、息もつかせぬアクションもあり、ちょっぴりロマンスもあって、SF設定もいい。少し難癖をつけると、この作品は「過去への干渉があると歴史が枝分かれする」という設定の時間SFなのだけど、作中のいくつかの設定はどうも辻褄があっていないように感じる。しかしまあ、じっくり考えないと細部はわからないので、細かいことは気にしないことにした。読んでいても「……あれっ?」と感じたりしたが、そのまま勢いに任せて読んでしまっていいんだろう。そういう牽引力がある。
ユニークなのは、舞台となる邪馬台国と近隣の住民がわりと方言を使いまくりというところかな。読みやすさに配慮したのか卑弥呼自身はふつうだが周辺はけっこうかなりきつい方言のこともあり、何を言ってるのか詳細がわからないようなレベルのものも(笑)。