アレステア・レナルズ『カズム・シティ』
>そういえば旅行中に読了していました。1000ページを越える巨編であります。の、わりにそのような厚みをいい意味でも悪い意味でも感じさせないSF長編。
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>とにかく長い。めちゃくちゃ長い。そして金太郎飴のように均質に話が展開していく。レナルズは、中短編を読む限りでは決して下手だとは思わないけれども、格別に上手いわけでもないし、長編にしたときに何か特別な技巧や趣向を凝らすわけではぜんぜんないので、長いとどんどんつらくなってくる。おれはこの現象を「大食いの論理」と名付けることにした。「どんなに美味い料理でも、これだけの大量を食いつづけていればやがて飽きがくる……」というアレだ。某大食いバトルまんがでは調味料なんかを使ったりするわけだが、読書ではそういうわけにもいかないので、たまに他の本に浮気しながら、黙々と読むしかないわけである。
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>というわけで、飽きた。いちおう読み通したけども。
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>本編は、主人公のパートと、主人公がなぜか夢に見る過去のスカイ・オスマンという人物の回想(?)パートに分かれるのだが、特にこのスカイ・オスマンのパートは滅法面白い。冷凍冬眠宇宙船団で、冷凍装置を維持管理しながら船団を航行する一族の物語。スカイ・オスマンは長じてある船の長となり、何らかの罪を犯して、目的地の船に到着したあとで裁きを受け、十字架に架けられて死んだのだが、死後に信仰の対象になるという人物で、作品世界ではキリスト教を歪めたような不気味なスカイ・オスマン教団というのが出てくる。主人公はこの教団が散布した洗脳ウィルスに冒され、オスマンの「偉業」を夢に見るようになるという設定で、しかしその夢がだんだん歪んでくるのだが……という流れになっている。この設定や、「回想」パートで次第に明らかにされていくスカイの行動なんかはちょっと面白い。
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>しかし、これに比べると、カズム・シティを舞台とする主人公パートはあまりにも退屈であくびが出てくる。面白みは特にない。カズム・シティの設定も異様といえば異様だけど、SFとしてはありきたりに見えるし、融合疫にしても何にしても、それほどすごい展開にはならない。
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>解説によれば、レナルズのオリジナル版はもっと短いものだったのを、編集者が「これでは短すぎるから」ということで、エピソードを追加して倍の長さにしたのだというが、明らかにこれはオスマンのパートだろう。正直な感想を言うと、この2つのパートは、それぞれ注力して2本の長編にするべきだった。その方がずっと面白かったろう。
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