海野螢『めもり星人』
>エロまんが家として知られる海野螢だが、今回は非エロでSFオマージュだという。ついでに解説が梶尾真治だという。ということで興味を惹かれて買ってみた。
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>この人、むかし『風の十二方位』というタイトルの、ル=グィンとはこれっぽっちも関係のない(でも割とふつうにSFっぽい)エロまんがを描いてたりもしたので、その辺ちょっとどうなのよ?と思っていたのですが、これは思いのほか楽しめました。といっても作風はあんまり差はないのだけど、もともとそんなにエロに必然性があるタイプのまんが家じゃないのだな。
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>内容。1万4千年ほど生きている「めもり星人」のみーむという、少女の姿をした存在を軸にした、ことばとおもいでにまつわる話。幼いころにUFOを見たと主張する少年。実の兄と愛しあってしまった女性、存在しないはずの穴にはまった中年サラリーマン、心の病んだ叔母がその名をつぶやく謎の少女。それぞれが、それぞれの記憶を「思い出し」そして救われる。主人公の「みーむ」は声をかけ、介在はするものの、積極的に何かの働きかけをすることはない。ただ、言葉を操るのみだ。そういうところから生まれるある種のSF的情感なるものが確かにある。そりゃまあこの内容なら「エマノン」のカジシンに解説を書いてもらうってのもわかるな。
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>ちなみに各話のタイトルは「幼年期の終わり」に「無伴奏ソナタ」に「停滞空間」に「夏への扉」ときた。直球ド真ん中すぎますよ! しかもほかはともかくアシモフの中からよりによって停滞空間かよ! やまあオレはアレは好きだけどよ。
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>で、この本のなかでは、その「停滞空間」が一番面白かったかな。総じての評価としては「まあまあ」。カジシンの(泣ける方の)SFが好きな向きには割とオススメ。
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