竹村政春『ろくろ首の首はなぜ伸びるのか』
>ううむ。「微妙」という表現で何もかも済ましてしまう姿勢はあまり好きではないのだが、実に微妙な本だったので「びみょー」と言っておきたい。面白くはある。面白くはあるのだが、何かがちょっと違う。
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>この本は、古今東西いろんな妖怪・怪物の類を生物学的知見から読み解く、という本であり、『すごい科学で守ります』ミーツ『鼻行類』とでも言おうか。そのようなコンセプトになっている。取り上げるのは飛頭蛮、ケンタウロス、豆狸、ぬえ、カナオシ、人魚、吸血鬼、カマイタチ、皿かぞへ、ろくろ首、オオツキヒカリ、赤えいの魚、目目連、カワリオオアゴウツボ、モスラ、蜃の全16種。これを1つずつ紹介していく。
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>それぞれが3つの構成に分かれる。最初は、実際の生物学的なトピック。次に各怪異の特徴を述べる。そして最後に「考察」として、怪異の特徴を生物学的に明らかに(?)していくというスタンスになっている。このうち最初の2つ、つまり生物学のトピックと、各怪異の特徴は実に面白い。この本は、実際の生物学の面白いところをつまみ食いするのには最適ではないかというくらい、様々なトピックのさわりの部分をコンパクトに、しかもわかりやすく紹介してくれている(正確さ、詳細さはその分劣るのだろうがこれは分量の問題もあって仕方ない)。一方、怪異の紹介については著者は専門ではないはずだが、ブレーンが優秀なのか筆者がちゃんとしているからか、けっこう説明に稿を割いていてこれも読んでいて面白いのだ。
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>ところがこれが「考察」になると、不思議に残念な感じになってしまう。なんだろう、「生真面目な人が一生懸命に考えたジョークを真剣な面持ちで語っているのを拝聴している」ような感じだ。内容はよくよく考えれば面白いはずなのだが、何か足りない。ユーモアセンスみたいな何かが。あるいはSF設定紹介などで架空の設定を許すときの「どこまで許されるか/どういうことを書くと読者の納得力が誘発されるか」の境界がわかっていないのかもしれない。たとえば、けっこう頻繁に「これこれこのような特徴をもつ新物質があった」という説明をしているわけだが、それってこのテの擬似科学ネタの本のいわば「ノックスの十戒」を破るがごとき行為じゃないかと。あーいやただ、新物質すべからくダメとなるとこのテの本は豊かさを失ってしまうと思うのだが、その導入の仕方は工夫しないといけないのではないだろうか。
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>ただ、こうした問題もまた分量の問題に還元されてしまうのかもしれず、たとえば同一著者で丸々一冊ろくろ首だけに使った『ろくろ首考』などはひょっとすると面白いのかもしれない(未読)。著者の資質についてはそちらも読まなければ断じることはできないだろう。
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>とはいえ本書に限っていうと、個々のトピックの中には非常に面白いものもあるだけにいささか残念、という結論は変わらない。
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