藤崎慎吾『ハイドゥナン』
>長かった……。長いわりにはストーリー立てはかなりふつうで物語展開は上巻の半分もいく前にだいたい想像がついちゃうし、文章に華のある人ではないので、そういう意味での「読みどころ」がないままずるずる長いので、けっこう読み進めるのが大変。
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>……ま、でも、そういえば『クリスタル・サイレンス』も割と面白かったわりにどういう話だったかさっぱり覚えていないなあ。火星が舞台だったっけ?というくらいしか。
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>では読みどころが皆無かというとさにあらずで、ポイントは深海描写や地質学描写の面白さだろうか。ただし、基本的な理論は登場人物の中では構築されているため、調査しました、結果はこうなので「やっぱりですね」という話に終始することが多く、つまるところ蘊蓄は面白くてもそれは知識の面白さであって科学の面白さまで到達していない感。
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>谷甲州『パンドラ』は連載で読んでいたのだけど、中盤やや後半あたりからの科学者たちがパンドラ理論を構築し発展していくという展開には科学者のダイナミズムが感じられて面白かったんだけど、本作の場合は登場する科学者はほとんどすべてが基本的に同一の仲良しグループであって、同じ理論を信奉し、同じ視点からものを語るので、そういう点の面白みが薄れているみたいだな、というところかな。
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>ガイア理論くさいISEIC理論については(いちおう作中ではガイア理論をひきあいに出した上で違う、というエクスキューズが与えられてはいるのだけど)、やっぱりニューエイジ思想にしか見えない。っていってもSF小説の設定としては充分アリなレベルだと思うんだけども、現実の科学との接点や説明のされ方がどうにももにょるところがあるわけで、それはつまり語られ方の問題なんだろうな。
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>という風にいろいろ文句をつけてみたのだけど、実際に読んでみるとそんなに悪い作品ではないけれども、大傑作というほどでもないですね、という感じであり、SFM考課表基準に従えば
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>という印象。
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>せめて半分の長さならもっと良好な反応だったと思うんですけどねぇ。
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