白井恭弘『外国語学習の科学』
会社で勧められたので読んでみたが、なかなか面白かった。外国語の効率的な学習法を紹介する本……というのはいっぱいあるがそういう本ではなく、実際の外国語の学習手法に関してどんな研究があり、どんなことが分かってきているのかということを紹介した本。著者は『外国語学習に成功する人、しない人』の著者だそうだ。そちらは未読なので、どれぐらい内容がかぶっているのかはわからない。
外国語の学習についての実証的な研究というのもあるんだろうなあ、という程度の認識だったので、実際にどういう研究や調査が行われていて、どういう結論が得られているのかという知見を得るのが何より面白い。「言葉の学習には、言葉を聞くだけじゃなくて話す機会が必要。たとえばテレビだけ見ていても効果はない」「本当に話す必要はない。話そうという身構えがあるということに意味がある」とかいった話が紹介されていて、へえと思う。そういうトリビアが満載だ。
逆にいうと、一つ一つの事例は納得が行くのだが、そこから敷衍される全体像みたいなものが見えづらい。コミュニカティブアプローチというのが主軸ではあるのだけど、具体的にはどう実践されているのかという説明や、たとえば読んでなるほどって思った人がなにをしたらいいのかということはよくわからない。もっとも、これはそういう本じゃない、という言い方もできるけれど。どちらかといえば英語教師に有益なタイプの本だろう。きっと教師なら、一つ一つの事例から自分の教授法に活かせるものがそれなりに見つけられるんじゃないだろうか。それ以外の人にとってはトリビア的に楽しむほうが向いている。また実際、その用途としては割と面白い。
それにしても読んでいると、チョムスキーの生成文法はこの業界には悪影響しか与えてないように見えるなあ、なんて思うのはわたしが予断を抱いているからなのかな?
まじめに英会話の勉強をしたいという参考書用途でないならおすすめ。