超常現象系2つ

This entry was posted by on Saturday, 7 April, 2007

山本弘『超能力番組を10倍楽しむ本

著者が著者なので例によって例のごとくの本ではあるけれど、これまでのたとえば「と学会」の本のような各論(個別の番組を取り上げてヘンなところを指摘する)ではなくて、トピックごとの説明になっている。

子供でも読めるように楽しめるように、という構成で組んでいて、たとえば中身は少年と少女が超能力ってあるの、といった話をしているところに「パパ」が割り込んできていろんな話をするといった風。フリガナのふりかたとかを見ても、これまでの方法と違っており(と学会の本は「こんなヘンなのがある」というのが基本スタンスだがこれは違う)、面白かった。

実際のテレビ映像なんかもキャプチャして使っていてわかりやすく読めるのもポイント(というのももちろん本当は本に書いてあるからといって鵜呑みにしてはいけないわけだが)。それと「じゃあ超能力はないの?」という疑問に「あるかどうかは保留すればいい」と答えてみせたりバランスが取れているのもなかなかいい……ま、ちょっと「テレビなんか信用できない!」という発言が多すぎるかもね。

しかし本書を読んでただただ思うのはむしろ「山本弘の娘ってもうそんな年か」ということなのでありました。「パパ」はあからさまに作者本人で、娘のモデルがそうなのかは知らないけれど、奥付によれば娘にも読ませてチェックさせていたらしい。かつて『ファンロード』で、娘が生まれるんだか生まれたんだかといった投稿が載ったのも、確かにもう10年くらい前でしたか……。ううーむそうか……。

藤野恵美『七時間目のUFO研究

これは講談社青い鳥文庫の児童小説。菊池さんがブログで紹介してたやつです。

主人公のあきらは、友達の天馬といっしょにペットボトルロケットを作って、放課後に校庭で飛ばす実験をしていた。隣の学校と、ロケットの大会をすることになっていたのだ。ところが、その実験中、ロケットを追って空を見上げた天馬が、UFOを見たという。あきらには見えなかったが、ついそれを言いそびれてしまう。その場かぎりかと思えたその話は思わぬ方向に広まり、だんだんおおごとになっていく。新聞や怪しい雑誌の記者、TV番組や、その出演者のほとんど信者みたいな人たち。一方でクラスメイトも何人かがUFOを目撃したと主張しだす。自分は見ていないけれど、本当にあったことなんだろうか…?

でも、わたしは最初に予想していたのとは少し違って、これはUFO現象についての誤解やトリックがメインの話じゃなく、それが好印象。物語のポイントは超常現象そのものやその解明にではなくて、それに反応するいろんな人達の描写と、それを目にした主人公の思いにある。たとえば主人公は、上で書いたように友達といっしょにUFOを見たことになっているので、UFOはどんな風だったかとか、いろんなことを聞かれる。でも自分は見ていない。見ていないことを、言うべきなんだろうか。それにあれこれ言われているうちに、だんだん自分がちょっと見逃しただけのような気もしてくる。だが……。

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「科学とは、わからないものをわからないと認めるところから、はじまる……。大学のときの教授がそう言ってたよ。」 >

「ぼくの学校の先生も言ってました。わからないことやまちがうことは、かっこ悪いことじゃない、って。」 >

「でも、人はわからないと不安だから、てっとり早い答えを求めてしまうんだろうね。」 >

「てっとり早い答え……。」 >

「ああ。簡単に理解できて、道徳的に正しくて、受け入れやすい答えを聞ければ、人は安心できるんだ。」 >

(一部中略、pp.188-189)

こんな感じのやりとりに至る。懐疑主義的、っていうのはそういう意味だろう。菊池さんは「スピリチュアルやニセ科学にはまる大人に読ませたいですよ。小学生はこんなのを読むんだよ。」とか書いてたけど、オレもそう思った。

いい本です。

この著者は「七時間目の〜」というタイトルをもつシリーズを書いていて本書は三冊目だそうだけれど、これは学園ものというのが一貫しているだけで、特に同じところが舞台とかそういうのではないらしい。ほかのも読んでみようかな。

ちなみにイラストはこの人かな。けっこういいですね。にしても前から思ってたけど、今の児童文学の挿絵ってけっこう、いわゆるライトノベルっぽいよなあ。いまよく売れているタイプのものではないと思うけれど、わたしが割と好きな感じのが多い気がする。そういえば蘇部健一の『ふつうの学校』(感想)も挿絵は羽住都だったしねえ(いわゆる「いい本」じゃないけど『ふつうの学校』はかなり狂った作品で、おすすめ。関係ないか。すまん)。

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