武富智の『EVIL HEART』に続きが出るとは

This entry was posted by on Sunday, 25 February, 2007

いや知らなかったので驚きました。

『EVIL HEART』は週刊ヤングジャンプに連載されていた合気道まんがだ。作者の武富智は、思春期の「繊細な心を持った」少年少女を描いたまんがを得意とする。代表作は、これのほかだと……『キャラメラ』か?

『EVIL HEART』も出だしはそんな感じ。主人公・正木梅夫(ウメ)の家は家庭内暴力に荒れていた。兄の暴力に耐えきれなくなり、ついに母親は兄をナイフで刺してしまう。兄は病院へ、母親は警察につかまって、ウメは姉とふたりでかりそめの平和な日々。そして中学校に上がったウメは、しかしさっそく上級生にからまれケンカになる。家庭の事情もクラスメイトに知られ、避けられるようになる。

そんななか、ウメはたまさか見かけた合気道の練習風景に魅せられる。武術か何かを身につけてケンカ相手や兄を叩きのめしたいと、そのなかにいた英語科教師のダニエル先生に教えを乞い、合気道を学びはじめる。

でも合気道って、自分からは攻撃をしないのかよ! ガーン。

……みたいなところでだいたい1巻の半分くらい。

いわゆる「キレる少年」「粗暴な暴力少年」といったある意味わかりやすい造形の主人公や、その主人公が残す周囲との軋轢は、「合気道は自ら攻撃をしない」というテーマと、たぶん読む前にぼくらが想像するよりずっとうまくマッチしていて、少年の成長物語として完成されている面白いまんがのひとつだった。

ただ、ヤングジャンプという雑誌から見ると、絵柄としても、こういうテーマにしても、ちょっと他と違いすぎていて「どうなのかなあ大丈夫かなあ」と思いながら読んでいたのだけど、けっきょく単行本3冊半ほど続いて、連載終了。打ち切り、という見方もできるけれど、最低限ここまで描きたいと作者が思ったところまではなんとか描かせてもらって終えられたんだと思っていた。この連載分は、単行本3冊で「力編」「技編」「心編」という副題がついて、もうだいぶ前に出ている(ちなみに「心編」だけ不自然に厚いのはたぶん、むりやりつめ込んだからだろう)。

でまあちょっと性急かもしれないけど終わりましたねーと思ってたんですが続きが出るもんですねー。

今回の「氣編」はダニエル先生が主人公。というか、ウメの側の物語はひとまず終息してしまったので、もちろんまだまだ積み残しはあるとしても意外と描きにくいのだろう。ダニエル先生が夏休みでカナダに帰郷、いろいろあってウメがそれにくっついてって、それで過去話がいろいろあるという構成。

正直に言うと、なんだろう、外伝というか、蛇足というか、いやいや面白いんですよ!?というか、続きが読めて純粋に嬉しいの半分、でも外伝なんでどうしたもんかと困るの半分……。

うん、面白いんですよ。「3巻まで読んだけど面白かった!」という人には大おすすめ。でもそうでない人には小おすすめ。いや、いいんですが。うん。

Comments are closed.