坂本康宏『逆境戦隊バツ

This entry was posted by on Tuesday, 2 January, 2007
>特撮ヒーローの世界を一段ひねった小説。ダサくてデブでハゲでカツラをひた隠しにしていて、おたくで、世間から蔑まれて生きてきた主人公、騎馬武秀は、ふとしたことで親友が怪物と化すのを目撃する。その瞬間、彼は光につつまれ、赤い色のスーツをまとう戦士に変身する……。「怪物化」のパワーがその人間のもつコンプレックスに阻害されたとき、正義のヒーロー「クルミレンジャー」に変身するのだ! ところが、ヒーローになったからかどうなのか、どうも騎馬の生活は順風満帆に変わりつつあり、コンプレックスが薄れてきた。このままではヒーローに変身できず、怪物化してしまう。どうする、どうなる? > >というあたりが1巻の「わかりやすい」あらすじか。 > >こういうヒーローもののパロディはいっぱいあるんだけど、それと一線を画しているのは、背後にもう一段、SF設定を潜ませているところ。1巻の末尾、ついに怪物が人のいるところで暴れだす。警官たちは束になってもかなわない。ところがそれを目撃している刑事のひとりは、それが怪物であることが認識できず、単に半狂乱の女性が暴れまわっているようにしか見えないのだ。さらに、とある登場人物は3年前の事件ですでに死亡していることが明らかになる……! > >2巻は、1巻で提示された謎をイッキに片付けていく。SFとしては、まあ、ありきたりといえばそうなんだけど、最後の結末に向けて一気呵成に進んでいく。怪物は実在するのか? いったい怪物化とは何なのか? 3年前に何があったのか? > >このように、ありきたりのヒーローパロディにもう一段、手を加えているのが面白い。そのくせ、最後の結末に向けて、妙に熱いヒーローっぽい展開になっているのはまぁ作者の資質か。『ダブルオー』もそんなでしたね。 > >ただ一点のみ残念でならなかったのは、主人公の「おたく」描写がぜんぜんリアルじゃないこと。想像で書いてるんだろうな、というのが透けて見えてしまうのだ。最後がゴレンジャーボールだったりするのも、ちょっとセンスの古さを感じる……。そういうのは確かに本編に対しては細部なのだけど、こういう体裁の本を読みたがる層にとっては細部こそが重要なのであるから、もうちょっと重視してほしかったな。 > >ま、大傑作とかではないけど「おれは好き」です。 > > >

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