フィリップ・リーヴ『移動都市』
>私の知合いがわりと褒めていたんだけど、そうした世評に違わぬ傑作。めちゃくちゃ面白いジュブナイルSF。
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>「六十分戦争」という最終戦争後の世界。地殻変動や気候の混乱などのため、都市を地表に固定するのはむしろ危険だと考えられていたため、都市たちはキャタピラを装着し、自ら移動するようになった。
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>それから1000年。
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>都市たちは互いに喰いあいながら淘汰と成長を繰り返し、オールドテクと呼ばれる最終戦争前のテクノロジーを再発見しながら文明の復興されていた。
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>という世界設定がまずシビれるわけです。
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>「互いに喰いあう」ってこれどういう比喩なのよ、とか粗筋を読んだ段階では思ってたんですが、なんというか、こう、マジに「食って」るので、割と冒頭のあたりにそういうシーンがありますが、ある意味で燃えます。よくこんなこと思いつくなあ。
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>物語の方もジュブナイルの王道で、見習い史学士の主人公はひょんなことから史学士長を狙う暗殺者の娘といっしょにロンドンの街から地上へと落ちてしまう。暗殺者の正体は何か、なぜ狙うのか。これまでの方針を変更したロンドンにはいったい何が起こっているのか?とまあそんな感じ。展開は息つく暇も与えず、とにかく読ませる。
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>1000年も経った今や都市が移動する意味はない、という「反移動都市連盟」も絡んできて……。
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>また、ジュブナイルというと何もかも丸く収まってめでたしめでたしという印象がありますが、そんなことはなく容赦のない展開で、終盤の展開やオチにはもう唖然呆然。
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>それに、キャタピラで移動する巨大都市、都市の間を渡る飛行船の自由商人たち、ヒマラヤ山脈の高峰で鉄壁の守りの内にある反移動都市連盟の都市たち。こういうヴィジュアルに訴えかける描写もけっこう上手いのも特徴。
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>今年度ベスト候補のひとつになりそうですね。困ったな。
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>なお、オビには四部作とありますが、これ単体でもきちんと完結しているので続きものが苦手な人でもおすすめ。変にブ厚くないのも良い感じ。
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