牧野修『月光とアムネジア』
>粗筋紹介は難しいので放棄したい。いろんな要素があるんだけども、それがごちゃごちゃと渾然一体になったままつき進むなんとも奇怪な物語だからだ。これの粗筋を考える人は大変だなぁと思って表4の粗筋を見てみて、また「うーむ」と唸ってしまった。かなり頑張って入るいるとは思うが……。
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>伝説の殺し屋の町田月光夜、三時間ごとに記憶がリセットされる不思議な空間レーテ、アガダ原中県とケモン帆県の対立、ホッファ窯変の会、ゆずす飯、狽。いろんな奇怪な有様が提示されながら物語が進行したり停滞したりする。
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>ただ、こういったものを全部ぶち込んでごった煮状態にすることで生まれるある種の凄みみたいなものが、今回はちょっと薄かったように思う。主人公たちは三時間ごとに記憶がリセットされるという設定になっていて、それが上手い具合に謎の提示にもなるし、「読者はわかっているが登場人物は忘れている」ことにもつながっている。それは全体的に見れば悪くはない気がするのだが、展開は読めてしまうわけで、その上でのぐだぐだした展開になっていて、読んでいるときには少し不満も残る。
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>最後に出てくるSF設定はぶっとんでいるが、しかし、牧野であればなにを今更、という気もする。
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>うーん……佳作、佳作ですね。面白いには面白いんですよ。牧野ファンなら必読でしょうが、一般の人には他の牧野修を勧めたいですね。
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>ちなみに風野ドクターが解説を書いているんですが、「
>私家版・精神医学用語辞典
>」で自身が書いていることを纏めつつ、牧野修論につなげていて興味深い。それと、石黒達昌とリンクさせるという視点はなかったので、新鮮な面白さがありました。なるほどなあ。
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