新城カズマ『サマー/タイム/トラベラー』
>ううーん。
>
>ともかく、主人公たちの、物言いと、価値観と、思考法とが、どうにも引っ掛かって読みづらいの読みづらくないのって。
>
>念のために書いておくと、読みづらいってのは別に文章が悪いということではなく、それはむしろ逆。細かいところの構成とか、きっちり書かれているという印象なので、再読してパズルピースを嵌めてみたいという思いも、ちゃんとある。でも逆に、あんまし再読したくないなぁという印象もある。なぜかっていうのが上で書いたような、主人公が(つまり作者が?)無条件に称揚する価値観とか思考法とか諸々に、ほとんどすべて留保しながら読むはめに陥ったからだ。てことはこれは相性の問題であるのだろう。
>
>もう一点、この作品はあとがきで作者が述べているように「シンプルな青春小説」なのだけれども、ともかくいかにも青春小説然とした佇まいの執拗なまでの繰り返しが、読んでいて少々うんざりする。
>
>が、まぁ、SFとして青春小説として、思ったより良いところに着地したようには思っていて、「アリかナシか」といったらそりゃあアリなわけですよ。つまらないということはない。でもまた、この終わり方もいかにも青春小説然としていてもにょるところがあったりして、何が嫌かということを言語化するとつまりオレは青春小説が嫌いだったのか?というところに陥って、それはそうでもないと思うのだが、でもそうなのかもしれないが、それはともかく、文章や描写は好きになれないが、総体としてはよく出来ているだろう。
>
>まとめると、「微妙」(この表現はあんまり使いたくないんだけど)。
>
>完成度とさっぴいて、±0か、+1か、というところか(SFM考課表換算で)。
>
>ところでそうそう、これは意図的に「そう」なっているのだろうが、この本で描写される風景はきわめて「今」を切り取っていて、作中時間は西暦何年だ?登場人物は平成何年生まれだ?ということがとても気になる。というわけで、たとえば10年後に生き残って読まれるようなタイプのものではない。5年……あるいは3年後にはちんぷんかんぷんになってる可能性がある。興味があるなら、今、読んでおくことをオススメする。
>