福井晴敏『終戦のローレライ』
>面白いんだけど、基本的に福井晴敏という男は話が長いと思った。
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>米軍のアイツの過去の話とか、書く意味あるのか? いや意味はあるだろうし作者が意味を見出しているのだからとやかく反論する資格は読者にはないのだが、なんというかこの、少年マンガ的に言うと「縁が黒いページ」が多い気がする。そのため、内容的にもそうだが物理的にも厚みが増していたように思った。もう少し、「読者に悟らせる」ことによる省略をしてもよかったように思う。
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>それから終章が無駄に長い。なるほど、著者の意図を汲み取ればこの終章はあった方がいい。しかしながら、太平洋戦争の描写でこの思いを読者に与えるのが正しいやり方なのではないか。敢えて何が、というところは未読の人のためにぼかすけれども、「肯定的に捉える」というところまでは、本編ではついに書けなかった。だから終章がここまで長い。ように読めてしまう。
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>つうわけで、エンターテイメント大作としてよく書けていて面白いけど、そういう細かいところがいろいろ疑問。つまりは読者をあまり信用していないような気がするってことかもしれない。しかし、読者の読解力を信用しないということと、ちゃんと説明できる丁寧さや細やかさは表裏一体であり、福井晴敏のエンターテイメントとはそのようなものである、ということでつまりは「確かに面白いのだがハマれない」という相性問題に帰着できる事柄なのかもしれない。
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>ちなみに映画は未見。
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