体育の日と特異日

This entry was posted by on Monday, 10 October, 2011

10月10日は体育の日。言うまでもなく、1964年の東京オリンピックの開会式の日が由来です。もっとも、直接そういう言明があるわけではなく、「スポーツにしたしみ、健康な心身をつちかう」のが趣旨である、らしい。そういうわけでハッピーマンデー以来、10月の第2月曜日になってしまい、東京オリンピックとは何ら関係ないわけですが、今年は久々に10月10日となった次第。ちなみに10月10日が体育の日となるのは2005年以来。

さて、東京オリンピックは夏季大会なのですが、10月に開会というのはオリンピックの通例としてもやけに遅い。なぜこの10月10日が選ばれたのかといえばこの日が(東京近郊における)「晴れの特異日」だったから、という説がまことしやかに流布しているわけです。実際今日も結構な晴れでした。しかし、そんなのは都市伝説で10月10日は特異日でもなんでもないという説もある。どっちが本当なのか。

この件はウィキペディア内でも割れており、「体育の日」のページでは「1966年から1999年までの34年間に東京地方で体育の日に1ミリ以上の雨が降ったのはわずか5回だった」という説明があり(要出典が曖昧だが……)、一方「特異日」のページでは「10月10日は統計的に晴れが多い日とは言いがたい」と言われてしまっていて、何がなにやら状態である。編集ってのは大変だとつくづく思う。

で、実際のところはどうなのかというと、特異日というのは気象庁のデータを元に統計的に解析して決まるものなので、特異日のリストに載っていなければ特異日ではない。結論としては、10月10日は別に特異日でも何でもない。

でも今日はいい天気だったよね、晴れがちだと思う、どうも納得がいかない、という人もいるかと思う。上記の「わずか5回」という表現にもいくらか誤解やミスリーディングがあると思う(私も少し誤解していた)。手品の種明かしをすると、特異日の定義がポイント。特異日というのは前後の日と比べて有意に特定の天候になりやすい日とされている。例えば梅雨がちで雨のよく降る6月ころ、なぜか6月1日は晴れの日が多い。これは珍しいね特異だねというわけ。だから別に、10月10日にどれだけ晴れが多いかはさほど重要じゃない。10月9日や10月11日など、10月上旬から中旬にかけて雨がちな気候じゃないと、どれだけ晴れが多くてもこの日を「晴れの特異日」とは言えない。例えば世界のあちこちでは「雨季」と「乾季」がはっきり分かれている地域があるわけだけど、乾季のまるっきり晴れたある日を「晴れの特異日なんですよ」と言われても、いやいっつも晴れてるし……と釈然としない気分を味わうだろう。「よく晴れてるはずなのになぜか雨の多い日」とか「雨がちなのになぜかこの日は晴れる」というのが定義なわけだ。

東京オリンピックの開会式を10月10日とした理由については他にも諸説あるようだが、以上の定義に従えば、少なくとも特異日というのは選ぶための条件には適さないことはわかる。開会式だけは無事に終えられたけど実際の本大会は雨がち、なんて大会運営上は大失態だよね。

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