Facebookの利用状況がその人の社会的能力にどう影響を与えたか調べた論文

This entry was posted by on Tuesday, 8 March, 2011

同僚に教えてもらって、 “Social Capital on Facebook: Differentiating Uses and Users” という論文を読んだ。Facebookの中の人とCMUの共同研究らしい。Facebookの広告としてユーザにアンケートに答えてもらい、8ヶ月後に同じユーザに再度アンケートに答えてもらう。その間のFacebookの利用状況を調べて、どんな影響があるかを調べたもの。

タイトルにある “social capital” とは “the actual or potential resources which are linked to a durable network of more or less institutionalized relationships of mutual acquaintance or recognition” という定義だそうだ。曖昧だけど、なんかその人にとって知り合いとの繋がりの強さのようなものを表すものだと考えればよいのかもしれない。

この種のアンケートはそれこそいっぱいやられていると思うが、この研究の面白いところはFacebookの中の人と共同で仕事をすることで、(匿名化されてはいるが)Facebookの中での活動をある程度はかることができているということ。8ヶ月という期間をおくことで、たとえばFacebookをヘビーに使っている人にどんな変化があるか、どういう使い方にどういう影響があるか、なんてことにも推測が立てられるようになるというわけ。

筆者らはFBの利用を3つに分類している。一つがダイレクトコミュニケーションで、メッセージの授受、相手のウォールに直接書きこむ、Like!を押す、チャットする、などなど。第二が受動的な消費で、これはニュースフィードを読むこと。第三がブロードキャスト、これは不特定多数に向けてニュースフィードを書くという行為。

結論としては、ダイレクトコミュニケーションの流入量には有意な影響があり、social capitalの増加と相関関係がある。面白いのは流出量は関係がないこと。受動消費やブロードキャストにも、数値としてはあるけれども有意な影響はないらしい。もうひとつ面白いのは、高いコミュニケーションスキルを持つ人と低いコミュニケーションスキルを持つ人という2つのグループに回答者を分けて、それぞれの利用が social capital にどんな影響をあたえるかを調べたもの。この場合でも、ダイレクトコミュニケーションはどちらのグループにも強い影響を与えるが、面白いのは受動的消費は前者(高いコミュニケーションスキルを持つグループ)には大して影響しないけど後者には大きな影響があるという結果が出ていること。ちなみにブロードキャストはどちらのグループにも影響がない。

ほかにもいろんなことを検討していて、たとえば手法じたいの妥当性についても検討している。Facebookの広告を使って被験者を集めた関係上、結果には偏りが起こる可能性があるが、ふつうの利用者とどの点がどの程度違っているかとか。利用方法はざっくり3つに分けたけど、メッセージとチャットとLikeをいっしょくたに扱っていいのかとか。そんなような、素人がとっさに思いつくような疑問点はだいたい論文に書かれているので、興味がある向きには論文をお読みください。

で、素人まるだしの感想ですが、FBの広告を使って被験者を募るっていう方法に、まず素直に感心しました。そういうふうにも使えるんだねえ。そりゃそうだ……。

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