ジョージ・R・R・マーティン『洋梨型の男』

This entry was posted by on Friday, 25 September, 2009

洋梨形の男 (奇想コレクション)

SFやファンタジイで有名なジョージ・R・R・マーティンの短編集。ただ、どちらかといえばホラー・怪奇っぽい作品が集まってる。

マーティンといえば《氷と炎の歌》ですっかり大河ファンタジイの大家として知られるようになっていたり、シェアード・ワールドものシリーズ《ワイルド・カード》などが知られていて、ほかにも最近だと『タフの方舟』というSF連作短篇もすごく面白かった(→1巻 / 2巻)。でも昔はこんなのも書いていたんですね。どれもこれも現代を舞台にして、なんだかいやーな話ばかりで素晴らしい。

イーリイ好きの自分としては、やはり「モンキー療法」とか「洋梨型の男」が楽しい。特に「モンキー療法」。強烈にデブな男が知り合いの激やせぶりを見かけてモンキー療法という怪しいダイエット法に取り組むという粗筋だけならどうということはない話だが、このモンキー療法のあまりにも直裁でひどいダイエット方法と、それを描くユーモラスな感じが面白く、なんとも変な話に仕上がっていて良かった。また、「終業時間」は編者自身が「箸休めに」と紹介するような掌編だが、『あるいは酒でいっぱいの海』あたりに収録されていそうな実にくだらないショートショートとして楽しんだ。

ラストの「成立しないヴァリエーション」はチェスものかつ時間SFでもある佳品で、チェスにおける「ヴァリエーション」(手筋)というアナロジーがうまく効いている。しかし思うにつけ救われないラストだよなぁ。素晴らしかった。

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