円城塔『Self-Reference ENGINE』

This entry was posted by on Sunday, 3 June, 2007

Self-Reference ENGINE

ここ最近、SFファンのあいだで「黄色いヤツ」という渾名で囁かれていた、ハヤカワJコレクションの最新刊。

傑作。

人類を遥かに越える巨大知性体群が綾なす、過去改変、時空の乱れなどの演算戦。人間の理解を絶したそれらを、互いに矛盾するように見える20の断片で描写する。

というと、たとえばイーガンのように理解を絶してわけがわからん「凄さ」のある作品なのかなあ、というとさにあらず。そのような難解さはなく、むしろとってもわかりやすい。自分がさっぱり理解できていないということが極めて明瞭に理解される。それにまた、円城塔が描く理解を絶した世界の演算戦はどちらかというとSFファンとかがしゃべるバカ話に似て、バカバカしく笑えてしまう。

まあ、その笑いにはいささかの教養が必要な面も垣間見えて、そのようなペダンティックな側面に嫌悪感を感じる人もいると思うけれど……ま、そういう感想はそういう人に任せよう。とにかく愉快で笑えて、いやおもろかった。それに、教養のある方が笑えるジョークもあるだろうけど、なくったって充分に楽しめる。

飛浩隆の「爆笑ソラリスジョーク集」という指摘があまりにも的確すぎて、ほかの人の感想のすべてを無化してしまっていると思いました。

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