S・ウェバー『オープンソースの成功』

This entry was posted by on Saturday, 24 February, 2007

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そういえば読んでたが紹介していなかったな。

副題は「政治学者が分析するコミュニティの可能性」というもの。内容は、大雑把なUNIX/FOSSコミュニティがどのように形成されてきたかという歴史をふりかえるのと、それに対して分析を試みるのの二部構成だと思ってもらえればそう大きな間違いはない。

ただ、歴史の部分はわりとよく書けていると思うのだけど、分析の部分は、ページ数もそれほど多くない上に、論も浅いという印象を受けた。この本の意図はおそらく、「バザールモデル」という単語から類推されるようにオープンソースソフトウェアの開発はフラットで対等な開発者たちの協調作業のように思われがちだけれどもそれは違う、というところに力点があると思われる。そこで「優しい独裁者モデル(Linux)」や「委員会管理方式(BSDやApache)」などの紹介が行なわれ、どのようにしてこういう形式が成立していったのか、といったことが多い。

うーん、でもまあ、それくらい知ってるしなあ。

というわけで、わたしはあんまり想定読者じゃなかったようだ。オビにも書いてあるように「現代のオープンソースコミュニティは、洗練された方法で組織化を行っている。これを明らかにできれば、他分野でも活用可能になるはずだ」と筆者は主張している。ただ。この本はそのためのとっかかりであって、他分野への応用についての具体的な話はさしてないといっていい。

本全体が、今後これから議論を深めるための土台みたいなものなので、これだけでは(わたしは)食いたりないなーと思ったのだった。次はもっと面白い本になるだろう……と、期待したい。

それから、これだけは書いておきたいが、校正の質が悪い。本書は縦書きの本だが、90度回転したいわゆる半角で書かれた単語と直立したいわゆる全角で書かれた単語が混在している、なんてのはまだ可愛い方で、ハイフンが90度回転してバーになっていたのはどうしようかと思った。CSRGが途中からSCRGになってたし。ちょっと気になるレベルだった。

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