星雲賞の投票を行った。最近はオンラインで投票できる……といっても、SF大会に参加していないものは投票券がないのでくだらない邪魔はしないように。ただ、参考候補作のリストはこのページから閲覧することができる。
ちなみにちょっとしたトリビアだが、この「参考候補作」というのはノミネーションではないとされている。どういう意味かというと、星雲賞の規定には候補に関する条件が記載されているだけで投票に関する制限はないから、実質的には条件を満たすものであればいかなる作品であっても候補ではあり、投票しても無効票にはならない。ただ、だからといって好きなものを選びなさいといっても投票するのが大変なので、参考候補作と呼ばれるものが選定されており(選定自体は日本ファングループ連合会議の参加団体が行う)、参考候補作として挙げられた作品は簡単に投票できる。前掲の投票ページにも「その他」という項目があり、自由に記入することができる。ただし実質的には自由選択では票がばらけ過ぎるため、参考候補作以外の作品が受賞したことは私の知る限りは一度もない(一度、参考候補作の選定を全く行わず、対象となった作品全リストを作成配布した年もあったらしいが)。
それはさておき、投票内容と、今のうちに私の予想を書いておく。
日本長編部門
『ハーモニー』
予測:同
昨年の国内SF作品ということで避けて通れない傑作だろう。『新世界より』とどちらに投票するかは悩みどころだが、基本的にはエンターテイメント作 品としてのウェルメイドなすばらしさよりは尖ったところのある作品が星雲賞は取るべきだ的価値観なので、『ハーモニー』を推す。
評判も高く、傑作でもあり、分厚い『新世界より』より読み終えた人も多く、悪い言い方をすると著者が亡くなってしまったというセンセーショナルな面もあるから、まあ間違いなく『ハーモニー』が取ると思う。
日本短編部門
「ノックス・マシン」
予測:南極点のピアピア動画
ノックス・マシンはノックスの十戒の中国人条項をネタにしたSFという怪作。実に素晴らしいのでぜひ取ってほしいところだけど、読んだ人間は少ないだろうから無理だろう。正直なことをいうと、参考候補作に上がるべきではなかったのではないかという気がする。星雲賞は規定により、雑誌掲載作品はその時点で参考候補作とならなかった場合に限り、次に単行本などに収録される段階で再び候補とな ることができるのである。これは、雑誌だけでは読者が限られている可能性を考慮した措置である。ノックス・マシンは今年の『年間SF傑作選』に入るという噂もあるの で、それをもって来年の候補になってくれた方が、まだしも取れる機会があったのではないかと言う気がする。
予測としては、同じく伊藤計劃のFrom the Nothing, with Loveも充分にありうるけれども、長短編両方に投票するとなるとためらわれる人が多いのではないか。これにSF大会参加者への馴染深さという点を勘案すると野尻さん が取る可能性がけっこうあるかも、などと考えている。
海外長編部門
『ライト』
予測:『時間封鎖』
『ライト』は消去法により選んだ。棄権でも良かったかもしれない。実に国書刊行会らしい晦渋というか、まあ渋い作品で、感想のときに明言したようにそんなに好きではないが、参考候補作の中では一番好きな方かもしれない。次点はアレステア・レナルズの『量子真空』。
予測としては、SFが読みたいでもぶっちぎりの1位だった『時間封鎖』をおいて他にないだろう。「ある日突然、地球から星空が消える。様々な調査の末にわかったのは、何らかの障壁によって地球全体がすっぽりと包まれ、時間の経過速度が十億分の一になってしまった」というキャッチーな設定や、火星にテラフォーミングを施して人類の種を植えつけるといったスケールの大きさはあるのだけど、メインテーマのキリスト教くさいところが個人的にはどうにもだめだった。
海外短編部門
「商人と錬金術師の門」
予測:同
テッド・チャン久々の新作となる「商人と錬金術師の門」はは藤子・F・不二雄を彷彿とさせるウェルメイドな時間SF。正直に言ってそこまで凄い傑作というわけではないのだが(すくなくともテッド・チャンの基準でいえば)、挙げられた参考候補作の中では中では間違いなく一番面白い。テッド・チャンは知名度もあるし、ワールドコンではすごい列が出来ていたことからもわかるようにSF大会人気もある。なので予測としてはチャンが鉄板だ。
他の候補作もなかなかのものが揃っている。たとえば「沈んでいく姉さんを送る歌」は、何らかの罪を犯した姉を、伝統的な刑罰としてタールの池に沈めることになるという奇妙な設定の短編。マーゴ・ラナガン『ブラックジュース』は、この短編だけで読む価値があると思っているぐらいで、自分の投票をチャンとこれとどちらにするかで真剣に迷った。迷ったのだが、海外短編の場合、「どうせ取れないけど敢えておれはこれに投票するぜ!」ってな投票をすると、総票数があまりにも少ないのでそういう評が案外生きてしまって、結果としてうっかり予想外なものが取ってしまう「『ニュースの時間です』現象」というのがあるので、ベタに攻めることにした。なんとなく星雲賞という枠組みでは、チャンの方が取った方がいいような気がするのだ。
メディア部門
『ファイアボール』
予測:『マクロスF』
もう全然アニメとか見ていないのであれだが、昨年は『ファイアボール』を抜きには考えられない。ディズニーチャンネルのCGアニメだが、これはもう素晴らしいとしかいいようがない。
でもまぁとれねぇだろうな、と思うわけで、知名度からいっても星雲賞は電王かマクロスFといったところでしょう。で、参加者の男女比を考えると『マクロスF』が順当かと思われます。
コミック
〈水惑星年代記〉シリーズ
予測:おもいでエマノン
〈水惑星年代記〉シリーズは、いろいろなあれによって海抜が上昇した未来の地球を舞台にした連作短編シリーズ。年代も舞台も登場人物も(少しずつオーバーラップしながら)ばらばらに語られて、その関連性を考えながら読むのも楽しいし、そうでなくても一つ一つの短編が楽しい。作者も星雲賞を狙って描いたという話があるようですが、いいでしょう、狙ってるならとればいいじゃないか、と思わせる素晴らしいシリーズなので、もし未読でこれから星雲賞の投票をするんだったら、ぜひ投票前に手に取ってほしい。
でもまぁ知名度、実績、SF大会参加者への人気、そのほかもろもろを考えると鶴田謙二と梶尾真治には勝てないよな。エマノンが悪いというわけではなく、これも「よくぞまんが化してくれた」という完成度の高さはあるのだけど……。
アート
棄権
予測:できません
誰かが際立った活動をした印象はないので棄権。その理由により予測不能。アートは個人的にはいつもそうですけど。
ノンフィクション
棄権
予測:『サイエンス・イマジネーション』
実は参考候補作を全く読んでいないことがわかったので棄権しました。『サイエンス・イマジネーション』も買ったんですが、もうひとつ読む気になれないんですよね。微妙に近いところがあるからなぁ。予測は正直なところわかりませんね。ただ、ワールドコンでのシンポジウムを元にしたということや参加している作家や研究者の知名度、出たときの評判なんかを考えるとこれが取る気がします。
自由
棄権
予測:なし
参考候補作がないのだけど、これ誰かが一票「そのほか」で投票したらそれで取れるってことなのかなあ。考えてみるとその辺の規定って曖昧なような。