Archive for May, 2009

Wolfram|Alphaがテスト公開していた

Posted by 向井 淳 on Sunday, 17 May, 2009

いろいろ噂されているWolfram|Alphaが利用可能になっていた。一般公開の18日を控えたテスト公開というやつだろうか。少し遊んでみたが、これはなかなか面白いおもちゃだと思った。

一部ではGoogleキラーだとも言われているが、事前のデモを見てもわかるように、また彼ら自身のFAQを見てもわかるように、Wolfram|Alphaはサーチエンジンでもないし、データソースもウェブではないらしい。むしろ一種のナレッジベースというべきだが、たぶんデータそのものを自作したわけではないだろうから、複数あるであろうナレッジベースを統合して共通のインタフェースで使えるようにしたものと見るべきだろう。実際、優れたインタフェースだし、クエリの解釈もよくできていて面白いと感じる(なのでどっちかというと情報大航海のライバルなのかも(笑))。ユーザの意図をうまくクエリから汲み上げているように見える。

一方、バックエンドにあたる知識ベースはいったいどうなっているのかというあたりは怪しいですね。知識ベースというのはおそらく非常にロングテールな世界で、たとえばよく質問されるであろうトップ300のデータとかでは全然住まない包括的なデータセットが必要となる。それはものすごく大変なことのはずだけど、Wolframはそこのところは気にしていないか意図的に無視しているのか、どうも不思議。

それはそれとして現状ですでに、何度か試すと負荷が高すぎると言って根を上げているのが気になる。18日の正式公開とやらではたしてまともに動くのかなあ。

……で、これが究極的に発達して強いAIが出現するというネタはとっくに既出っぽい気がしますが、wolfram alphaって答えしか教えてくれないんですよね。データソースも推論の過程も(当然だけど)教えてくれない。そこで、うまくクエリを投げてデータベース から有益な知識を引き出し、さらに因果関係を人間に理解できる形で表現する人間が必要になる……ってなると野尻さんの「公認研究士」シリーズだよな、それは。
# 何故か知らないけど42という答えが出てきたので「なんで42なんだ?」と考え始めると『銀河ヒッチハイクガイド』になるわけですが


S-Fマガジン2009年6月号

Posted by 向井 淳 on Sunday, 17 May, 2009

久々に感想を書こう。今号はスプロール・フィクション特集の第5弾だ。

スプロール・フィクションって何、って知らない人も、この日記の読者には多いだろうけれど、それについての説明はしない。というより、5回も特集をして、わかったこともいろいろあるが、結局のところスプロール・フィクションというのは特集責任者の小川隆さんの発言と違って、単に「小川隆好み」な作品のことである、としか言いようがないことがわかってきた。わかってきたというか、それは最初の特集から言われ続けてきたことなんだけれど、すっかりそういうことが露呈したな、という印象だ。

翻訳家として海外SF紹介者として、あるいは米国SF情報誌のローカスの日本における代理人として、あるいは一個人としても小川さんのことは非常に尊敬しているのだが、こういうジャンル横断的というか、スリップストリーム的というか、そういった作品群や作家群が、小川さんのいうように新潮流となっているかというと、全然そうでもないということが、今回の特集でいえば英語圏SFの作家や編集者へのアンケートからはむしろ浮き彫りになっている。個別の作品は面白いものもあれば個人的にはそうとも思えないものもあるが、こうした作品が新しいか古いかというと、ユニークであることは新しさを意味しないとしか言いようがないだろう。

たとえば今回の特集でいえば「ローズ・エッグ」。アングラなストリートアート文化とギャングの友情の物語を、少し饒舌な語り口で描いた佳作で、確かに面白かった。でも正直に言ってこれは『80年代SF傑作選』に入っていてもさほど違和感のない作品ではないかと思う。小川さんの好みの作家はいいのだが、それを「スプロール・フィクション」といって纏めてみたり、ましてやそれを新しい流れだとみなすのは苦しい言い訳でしかないのではないだろうか。

そういう意味では残念な感じの特集ではあったが、特集そのものはそれなりに楽しいし、こういう作品も載っていないとSFMを読んだ感じがしないので、続いて欲しい。という微妙な感じでした。


jmuk.orgのいろんなのが落ちてた

Posted by 向井 淳 on Saturday, 16 May, 2009

ずーっと昔のまんまだったjmuk.orgのOSのバージョンをFreeBSD 7.2-RELEASEに上げたのだが、その時ちょっと失敗してたようだ。最近はfreebsd-updateで楽だなあ、などと思ってたのだが、OSのメジャーバージョンを上げるとなるといろんなものが変わるわけで、具体的に言うとサードパーティパッケージを全部上げる必要があるわけだ。ところがその途中でruby-bdbのバージョンを上げたらportupgradeがこけた、というかなり残念な理由により、多くのサービスが止まっていた。この日記もDBプロセスがこけてたからか止まっていたし、SF系日記更新時刻Rも、「Rubyはアップグレードしたのにruby-iconvがアップグレードする前にportupgradeが死んでいた」というがっくりくる理由により更新が止まっていた。

とりあえず現在は快調なようだ。ただなんか、この日記がやたら重くなったような気がするんだよな。要観察だ。

(追記: 2009/05/17 15:35:32) やたら重かった問題は、なんかカーネルを再構築して再起動したら直ったような気がする。ネットワーク機器のデバドラがおかしかったのかなあ。


ファイアボールのDVDが出るようだ

Posted by 向井 淳 on Tuesday, 12 May, 2009

DVDファイアボール発売決定とな。

amazon にもあったのでさくっと予約注文しておいた。てか今現在、amazon.co.jpのDVD1位になってますね。ううむ、そんなに人気だったのか。ひょっとして星雲賞も頑張れば取れるかも?

……しかしamazonの予約注文てイマイチ信用できないというか、受け付けたと言っておいて注文が殺到してたことがわかると後で「やっぱだめでした」とか言い出しかねない不安がなー。がなー。


川端裕人『エピデミック』

Posted by 向井 淳 on Sunday, 10 May, 2009

小説とか文学とか、そういった類のものに対して、現実へコミットする度合いで評価するというタイプの人がいる。それはそれでご立派だと思うけど、個人的な立場を表明させてもらえれば、基本的にはぼくはそういう視点からの評価をフィクションに対しては下さない。たとえばSFで説明されているものが科学的に正確であるに越したことはないのだけれど、そうであることは決して優れた作品であることの証明じゃないと思っている。それに、その意味での優れた作品ならばノンフィクションのほうが適した形態のはずだろう。でも、それは「基本的には」であって、そうであるというフィクションは確かにあるし、たとえば川端裕人の本というのはそうだと思っている。つまり、現実に存在する、ある事象を実際に描いていて、それがある確度において非常に正しい、そして正しいことが作品の価値になるっていうタイプの小説だ。それに川端裕人はその意味で優れた小説の書き手でもある。

そういう作品にはいろんな役割があって、たとえばその分野を取り巻く社会事情も込みで取り上げるということがある。たとえば『竜とわれらの時代』では、恐竜学だけでなく、恐竜に興味を持つわたしたち、それを利用したい人達、というのを描いていた。確かに、そういうスタンスも込みで考えるとノンフィクションよりも小説が向いているような気もする。ほかの役割としては、たとえば小説で描かれる事象と関連することに実際に遭遇したときに価値がいや増す、ということもあるだろう。知っているということは重要だ。というわけで『エピデミック』も、今この時期だからこそ読まれるべき点を備えている。

まず基本的な用語の確認から。エピデミックというのは感染症が流行しているという状態を指す表現。これが国家を越えて急速に蔓延していくとパンデミックと呼ばれる。メキシコ・北米のインフルエンザもパンデミックと呼ぶかどうか議論があるようだけど、ともあれ、あれがエピデミックだ、もしくは「であった」というべきなのかもしれないけれど。

ということでタイトルから明らかなように『エピデミック』はまさに感染症の蔓延を描いた作品だ。舞台は東京から100キロほど南の太平洋につきだした、とある半島。ここで季節を少し外れたインフルエンザが蔓延していることが発覚する。ところがやがて、どうもインフルエンザではない新型の感染症が疑われるようになる。原因不明の奇病でばたばたと倒れていく人達。国立集団感染予防管理センターのフィールド疫学チームの一員、島袋ケイトは疫学的な手法から感染源の特定と「元栓を締める」ことを試みるが……というのが粗筋だ。

本書の鍵になるのが疫学だ。疫学の定義や疫学的な方法論については、ウィキペディアの記事を読むか、あるいは本書を読むのが手っ取り早いような気がするが、病原を特定するのではなく、伝染病の感染経路や発生源を統計的に調べる方法であると言えそうだ(エラソーに書いてるが私も素人なので)。疫学の観点からどのように感染症を調べていくと同時に二次感染を防いでいくか、ということが描かれるわけで、様々な状況証拠を元に少しずつ可能性の幅を狭めていき「元栓」まで辿っていくのはスリリングですらある。その過程と、その中で描かれる疫学的なアプローチ、それから主人公たち疫学チームの伝染病に対するスタンス。そこがこの本の第一の読みどころで、一番面白いところでもある。ただし、それだけならこの本が小説である必然性は、ない。というわけで、というのも変だけど、疫学的なアプローチをどうやって周囲に伝えていくか、という社会との関わりも肝になる。たとえば風評被害を恐れて動きが鈍い政治家たち。噂におびえ、「病院に運ばれたら戻ってこれなくなる」と恐れる住人たち。「ただのインフルエンザ」のはずが死亡してしまい、納得が行かないまま医療過誤を疑う遺族。主人公に興味を持ってアプローチする新聞記者。敢えてSARSの可能性を主張することで周囲を動かそうとする主人公たち……そういう雑多な立場を丁寧に描いていく筆致は確かで、いかにもありそうなシナリオが描かれる。

まあ、「小説」としての評価としては、言いたいこともまあないとはいえない。たとえば水商売(天羽さん的な意味の方)の話なんか敢えて入れる必然性があったのかとか。でも、この本はまさに今こそもっと読まれるべきじゃないかという気がする。角川は刷り増ししているようなのでamazonでも普通に買えるようになってるみたいだけど、文庫化されないのかな?


星雲賞の投票をした

Posted by 向井 淳 on Thursday, 7 May, 2009

星雲賞の投票を行った。最近はオンラインで投票できる……といっても、SF大会に参加していないものは投票券がないのでくだらない邪魔はしないように。ただ、参考候補作のリストはこのページから閲覧することができる。

ちなみにちょっとしたトリビアだが、この「参考候補作」というのはノミネーションではないとされている。どういう意味かというと、星雲賞の規定には候補に関する条件が記載されているだけで投票に関する制限はないから、実質的には条件を満たすものであればいかなる作品であっても候補ではあり、投票しても無効票にはならない。ただ、だからといって好きなものを選びなさいといっても投票するのが大変なので、参考候補作と呼ばれるものが選定されており(選定自体は日本ファングループ連合会議の参加団体が行う)、参考候補作として挙げられた作品は簡単に投票できる。前掲の投票ページにも「その他」という項目があり、自由に記入することができる。ただし実質的には自由選択では票がばらけ過ぎるため、参考候補作以外の作品が受賞したことは私の知る限りは一度もない(一度、参考候補作の選定を全く行わず、対象となった作品全リストを作成配布した年もあったらしいが)。

それはさておき、投票内容と、今のうちに私の予想を書いておく。

日本長編部門
『ハーモニー』
予測:同

昨年の国内SF作品ということで避けて通れない傑作だろう。『新世界より』とどちらに投票するかは悩みどころだが、基本的にはエンターテイメント作 品としてのウェルメイドなすばらしさよりは尖ったところのある作品が星雲賞は取るべきだ的価値観なので、『ハーモニー』を推す。

評判も高く、傑作でもあり、分厚い『新世界より』より読み終えた人も多く、悪い言い方をすると著者が亡くなってしまったというセンセーショナルな面もあるから、まあ間違いなく『ハーモニー』が取ると思う。

日本短編部門
「ノックス・マシン」
予測:南極点のピアピア動画

ノックス・マシンはノックスの十戒の中国人条項をネタにしたSFという怪作。実に素晴らしいのでぜひ取ってほしいところだけど、読んだ人間は少ないだろうから無理だろう。正直なことをいうと、参考候補作に上がるべきではなかったのではないかという気がする。星雲賞は規定により、雑誌掲載作品はその時点で参考候補作とならなかった場合に限り、次に単行本などに収録される段階で再び候補とな ることができるのである。これは、雑誌だけでは読者が限られている可能性を考慮した措置である。ノックス・マシンは今年の『年間SF傑作選』に入るという噂もあるの で、それをもって来年の候補になってくれた方が、まだしも取れる機会があったのではないかと言う気がする。

予測としては、同じく伊藤計劃のFrom the Nothing, with Loveも充分にありうるけれども、長短編両方に投票するとなるとためらわれる人が多いのではないか。これにSF大会参加者への馴染深さという点を勘案すると野尻さん が取る可能性がけっこうあるかも、などと考えている。

海外長編部門
『ライト』
予測:『時間封鎖』

『ライト』は消去法により選んだ。棄権でも良かったかもしれない。実に国書刊行会らしい晦渋というか、まあ渋い作品で、感想のときに明言したようにそんなに好きではないが、参考候補作の中では一番好きな方かもしれない。次点はアレステア・レナルズの『量子真空』。

予測としては、SFが読みたいでもぶっちぎりの1位だった『時間封鎖』をおいて他にないだろう。「ある日突然、地球から星空が消える。様々な調査の末にわかったのは、何らかの障壁によって地球全体がすっぽりと包まれ、時間の経過速度が十億分の一になってしまった」というキャッチーな設定や、火星にテラフォーミングを施して人類の種を植えつけるといったスケールの大きさはあるのだけど、メインテーマのキリスト教くさいところが個人的にはどうにもだめだった。

海外短編部門
「商人と錬金術師の門」
予測:同

テッド・チャン久々の新作となる「商人と錬金術師の門」はは藤子・F・不二雄を彷彿とさせるウェルメイドな時間SF。正直に言ってそこまで凄い傑作というわけではないのだが(すくなくともテッド・チャンの基準でいえば)、挙げられた参考候補作の中では中では間違いなく一番面白い。テッド・チャンは知名度もあるし、ワールドコンではすごい列が出来ていたことからもわかるようにSF大会人気もある。なので予測としてはチャンが鉄板だ。

他の候補作もなかなかのものが揃っている。たとえば「沈んでいく姉さんを送る歌」は、何らかの罪を犯した姉を、伝統的な刑罰としてタールの池に沈めることになるという奇妙な設定の短編。マーゴ・ラナガン『ブラックジュース』は、この短編だけで読む価値があると思っているぐらいで、自分の投票をチャンとこれとどちらにするかで真剣に迷った。迷ったのだが、海外短編の場合、「どうせ取れないけど敢えておれはこれに投票するぜ!」ってな投票をすると、総票数があまりにも少ないのでそういう評が案外生きてしまって、結果としてうっかり予想外なものが取ってしまう「『ニュースの時間です』現象」というのがあるので、ベタに攻めることにした。なんとなく星雲賞という枠組みでは、チャンの方が取った方がいいような気がするのだ。

メディア部門
『ファイアボール』
予測:『マクロスF』

もう全然アニメとか見ていないのであれだが、昨年は『ファイアボール』を抜きには考えられない。ディズニーチャンネルのCGアニメだが、これはもう素晴らしいとしかいいようがない。

でもまぁとれねぇだろうな、と思うわけで、知名度からいっても星雲賞は電王かマクロスFといったところでしょう。で、参加者の男女比を考えると『マクロスF』が順当かと思われます。

コミック
〈水惑星年代記〉シリーズ
予測:おもいでエマノン

〈水惑星年代記〉シリーズは、いろいろなあれによって海抜が上昇した未来の地球を舞台にした連作短編シリーズ。年代も舞台も登場人物も(少しずつオーバーラップしながら)ばらばらに語られて、その関連性を考えながら読むのも楽しいし、そうでなくても一つ一つの短編が楽しい。作者も星雲賞を狙って描いたという話があるようですが、いいでしょう、狙ってるならとればいいじゃないか、と思わせる素晴らしいシリーズなので、もし未読でこれから星雲賞の投票をするんだったら、ぜひ投票前に手に取ってほしい。

でもまぁ知名度、実績、SF大会参加者への人気、そのほかもろもろを考えると鶴田謙二と梶尾真治には勝てないよな。エマノンが悪いというわけではなく、これも「よくぞまんが化してくれた」という完成度の高さはあるのだけど……。

アート
棄権
予測:できません

誰かが際立った活動をした印象はないので棄権。その理由により予測不能。アートは個人的にはいつもそうですけど。

ノンフィクション
棄権
予測:『サイエンス・イマジネーション』

実は参考候補作を全く読んでいないことがわかったので棄権しました。『サイエンス・イマジネーション』も買ったんですが、もうひとつ読む気になれないんですよね。微妙に近いところがあるからなぁ。予測は正直なところわかりませんね。ただ、ワールドコンでのシンポジウムを元にしたということや参加している作家や研究者の知名度、出たときの評判なんかを考えるとこれが取る気がします。

自由
棄権
予測:なし

参考候補作がないのだけど、これ誰かが一票「そのほか」で投票したらそれで取れるってことなのかなあ。考えてみるとその辺の規定って曖昧なような。


wordpressに移行

Posted by 向井 淳 on Wednesday, 6 May, 2009

というわけで、WordPressに移行することにした。

くだくだと書きたくはないので理由を簡潔に述べると、独りでちょこちょこいじるのはいい加減飽きたのだった。大勢につくとスパムがついてくるのが難点だが、運営が楽だというのは利点だよな、と。

ということでこれからもよろしくお願いします。旧記事もwordpressに乗っけてリダイレクトするようにしました。RSSフィードも301して おくのでこれまでのURLで問題ないでしょう。というか、もっと前のやつでもいまだにアクセスがけっこうあるんですけど、続けないとだめでしょうね。 301を信じて新しい方のURLに自動的に切り替えてくれるfeed fetcherってあるのかな。

ところで、データの移行は済んだんですがコメントの移行が出来ない。データは移行されて、管理画面からは見えるんですけど、なぜか普通のポストからは見えないという。うーん、ま、いいか……?