Archive for August, 2008

しょぼいカメラでゆがんだ写真

Posted by on Thursday, 21 August, 2008

http://wiredvision.jp/news/200808/2008080522.html

これはなかなか面白い、というわけでいろいろと撮ってみた。たとえばコレ。本当はまっすぐの煙突。

工事現場。

てな感じ。なかなか面白い。

原理もだいたい上の Wired Vision に書いてあるのだけど、つまり CMOS 素子に実際に感光させてデータを取り出すときには、スキャンするように処理するからあるピクセルと隣のピクセルとでセンサが受光するタイミングは厳密には異なる。そこで対象が(あるいはカメラが)動いていると傾いたり歪んだりする。 iPhone のカメラはスキャン速度がいい具合に遅いので面白い、と。

もちろん、スキャンの問題なので上で紹介されているような方法を取らなくてもいい。たとえば次の写真は電車のなかから単に撮っただけのもの。

ゆがみは移動速度、というかカメラから見た視野内での移動距離による。あたりまえだけど。したがって、手前の柵や箱や電柱はかなり歪んでるけど、奥の建物はそうでもないという具合になっているのがちょっと面白い。

実際にやってみるといろいろわかった。たとえば、 iPhone はシャッターボタンを押すと「カシャッ」という音がして、すーっとシャッターが閉じるようなアニメーションになるのだが、実際にキャプチャされるのはシャッターが閉じた後のもの。はじめは回転を止めるのが速すぎてまったく歪んでいない写真を何度か撮ってしまった。

それと回転速度について。はじめはおそるおそるという感じで動かしてたけど、意外と速く振るような感じでオーケーっぽいことがわかってきた。当然、速度が速いほど歪みは大きい。ただもちろん、速すぎると写真がブレてしまうことがあるのだが、ピーカンのいい天気なら手で振り回すぐらいの速度でも案外とブレない。曇りだったらブレちゃうことはあるみたい。

まあそんなわけでみんなも遊んでみるといいと思いました。

 

ところで、この写真は iPhone だけなのかな、という疑問が。もちろんちゃんとしたデジカメはべつだろうけど、携帯電話のカメラにそんなにいいチップを積んでるかというと甚だ疑問。すくなくとも一昔前の携帯なら行けそうな気がしますね。レッツトライ。


アレステア・レナルズ『量子真空』

Posted by on Wednesday, 20 August, 2008

あー…………どうでもいい。

面白いとかなるほどとか長いとか(笑)思うことはいろいろあるんですが、真っ先に思い浮かんだ感想は「どうでもいい」でした。ここまでどうでもいいと思ったことはないかもしらん。

前作『啓示空間』のあと、連接脳派たちは「ウルフ」と呼ばれる存在に気付く。遥か昔から知的生命を発見し殺戮するバーサーカー機械。このままウルフに感付かれれば人類は滅亡する。主人公たちはこの「ウルフ」に対抗するために奔走しはじめる……という今どき珍しくもない粗筋ですが、脇にちりばめられた大ネタ小ネタはわるくない。タイトルにもなってる量子真空まわりのSFガジェットや様々な設定。そして「なぜウルフはわざわざこんなことをするのか?」という謎はとても面白いし、そもそもこの疑問じたいがいわゆるバーサーカーものとしては珍しい問い掛けで面白いし、意表をつく答えもよかった。このシリーズは『啓示空間』も『カズムシティ』もそうだったけど、読み終えてみればつまんないという感想ではなかったんだよな。

しかしなんというか、何もかもどーでもいい。大ネタも真相もなにもかも。なんなんだろう、ここまで長いと「長かったなあ」という方にしか意識が向かわないんですかね。

続き、出るとしても読まないかも。かも。レナルズは短編の方が断然に面白いよなあ。

ところでわたしは『啓示空間』も『カズムシティ』も読んではいるんですが大して覚えてません。同じような人も多いと思います。あるいはそもそも読んでないとか。しかし覚えてなくても読んでなくても、ご心配なく。本作は楽しめます。といってもその理由は本作が独立性が高いからではなく。とくに『啓示空間』の登場人物はばんばん登場しますし、それ以外の短編のキャラなんかも入り乱れてのストーリーです。ただ作者は異様に親切でして、必要そうなところにちゃんと前作のあらすじ(の断片)を仕込んでる。既読なら「そうだったそうだった」と思い起こすし、未読なら「そうなのかあ」と思うわけで問題なしというわけ。

しかし、ということは、と思うわけですよ読みながら。あんだけブ厚かったのに、けっきょく短く語るならこんくらいで語れる程度の話だったんかいな、と。いやまあ、本当の本当にここで語られる粗筋だけで済むかっていうとそういうわけにもいかないとは思うんですが、そもそもレナルズの作家としての資質はそういう物語的なディティールというか容量というか、そういうところにはないように思うんですよね。要約でないにしても、この長さはないよなあと思わざるをえない。例によって「長さが1/3なら傑作だったなあ」という感じ。

おっと、 Wikipedia によると、2003年に出た次作 Absolution Gap が今のところこのシリーズで一番最後の作品なのか。この世界の長編はもう一本(The Prefect)あるが、これは時代的にはほかの作品より遡り、キャラクターなども同一ではないと。

前言を翻すけど、もう一作でひとまず決着がつくのであれば読むのもいいかもね。まあ Absolution Gap てのは『量子真空』よりも長いんですけど……!

 

最後の最後に。本作は原題は Redemption Ark というタイトル。 redemptionという単語は見慣れませんが英辞郎によれば贖罪という意味。てことで直訳するなら『贖罪の方舟』というところでしょうか。『量子真空』というタイトルでもべつにいいけど、なんでそうなっちゃったんですかね。まあ、そっちの方がSFSFしててこういうのが好きそうな人には売れそう、という理由かな(というか『贖罪の方舟』じゃぜんぜん売れなさそうというか)。

しかし、つまり、作者の意図としてはそっちのパートがメインのつもりだったんスか、もしかして。


川上亮『コミケ襲撃』

Posted by on Monday, 18 August, 2008

コミケ襲撃

せっかく夏の期間中だということもあり、さらっと読んだ。

川上亮=秋口ぎぐるは『ラヴ☆アタック』や『ひと夏の経験値』など好きなところのある作家なんだけど、んーこれはちょっとイマイチかな。

知り合いに騙され借金を負い、追い詰められたしげる、レツゴー、ブンロク、浅野さんの4人は、同人誌即売会で儲けている大手サークルに強盗するという計画を立てる。上手く行きかけた矢先、最大手のサークルに向かったところ、なぜかそこは将軍様の某隣国が外貨獲得のために運営していたサークルで、諸処の偶然で襲撃は失敗。ところがごたごたの末に当のまんが家を誘拐してしまう。かくして公安警察と隣国のスパイに加え、そのまんが家をデビューさせようとしていたまんが編集者、主人公たちという4者がそれぞれの思惑で動きはじめるが……といったあらすじ。

基本的には、4人のうちブンロクというのがステレオタイプな空気の読めないデブオタという設定で、こいつが暴走して話がデタラメな方向にどんどん広がっていき、収拾がつかなくなっていくという話で、その話の転がしかたとかは悪くないと思うんだけど、なにかが足りないように思った。しげるのコンプレックスに溢れた視点がどうも作品のコミカルな雰囲気とマッチしてないような気もする。もっとも、作中にしげるがコミケ参加者を評するところは妙に印象に残ったりして悪くない。

ところでメインキャラ4人の名前が『ラヴ☆アタック』といっしょなのはなにゆえ?

 

それにしても、内容というか展開というか、ブンロクというキャラの造形やいじり方というか、いかにも映画っぽいよなーとか思って読み終えてから改めてオビを見直したらもともと映画企画コンテストの応募作品だったんですね。http://www.kadokawakikin.jp/announce06.htmlこれか。

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企画名:『東京即売会襲撃!!(仮題)』 >

あらすじ:冴えない青年5人組は、知り合いに騙されて多額の借金を背負うことに。ヤクザから追われる毎日の中、同人誌即売会の会場の襲撃を計画。5人の小さな思い付きは、やがて国家を揺るがすほどの大事態を生むのだった……。美少女同人作家との出会い、うごめく国家の陰謀、謎の情報屋など、様々な人間の思惑が交差する、一日だけの青春群像アクション。

……5人?


コミケ行ってきた

Posted by on Sunday, 17 August, 2008

去年はどちらも行けなかったし、一昨年の冬も行ってないと思う。一昨年の夏もどうだったかな。ともあれ2〜3年ぶりのコミケでした。もっとも今年はSF系は初日の金曜でふつーに仕事をしてたため、行ったのは三日目のみ。まあ、大学SF研の会誌をぜんぶ買うみたいなバカみたいな苦行はやめたのでSF系でこそ買うものがあんまりないのかもしれません。非電源系ゲームも見るのは諦めた(そっちは二日目)。

さて、もういい年なので急ぐこともなく、国際展示場駅には11時過ぎくらいに到着。ちょっと並ぶかな、と思って暇潰し用にニコリを持っていきましたが、行列はまったくなく素通し状態になっていました。噂の荷物検査もやっていなかった。荷物といえば、東へ行く通路に手荷物預り所(?)みたいなのがあったのは驚きましたがね。あれ、いつからあるんでしょうか。

だいたい会うべき知り合いには会って、買うべきものは買った感じ。わたしはおおむね「その他」に分類される同人誌ばっかり買うので、義足の人の日常の本とか、フランスの漫画イベントの本とか、廃線を散歩する本とか、レゴでオレオレなメカをつくった写真集とか、そういうのを買ってました。メジャーどころだとペンマニアの新刊(といっても昨年夏のやつと冬の無印良品編のもの)とか、風虎の「宇宙の傑作機11 スプートニク」「世界の射場から 種子島宇宙センターへの旅」「中国1986」とか。

2時ぐらいになってだいたいもういいか、という気分になったので帰ることに。たまにはフェリーに乗ろうかと思ったら30分くらい待つことになったため、待ってもよかったんですがりんかい線で帰ることに。んで最寄駅のちかくの喫茶店でだらだらと同人誌を読むキモいおたくを演じてました。

ところで喫茶店で読んでた松浦さんの中国の話はやたら面白かった。


小川一水『フリーランチの時代』

Posted by on Wednesday, 6 August, 2008

フリーランチの時代

SFM掲載時からこの表題作「フリーランチの時代」が妙にひっかかってる。これは大いなる愚作だと思う。気に入らない作品だが、そういう自分をどう正当化したものかで攻めあぐねている感じ。

わかりやすく悪役めいて人類を滅ぼすだけの能力をもった宇宙人がやってきて人類を同化してしまう。ようするにこれは伝承族が勝利するマップスなんだよな。そこの違和感があるのだが、しかし悪役ぽい設定のやつがいっけんよくあるSFでは悪いこととされることをしているのが実はハッピーエンドにつながるというのは話の前提というかコンセプトみたいなもので、そこがヒネてるのがイカンと文句をいうのは馬鹿だ。

ひとつどうしても気になるのは、人類側が誰も拒絶をしない(ように読める)ところかもしれない。論理的な帰結として受け入れるのが正しいとしてもそれを受け入れない人は一定数いる。そういう話じゃないからとはいえ、そういう可能性を無視してのほほんと書いてるのが気にさわるのかもしれない。そういうことにしておく。

 

この短編集には、不死や人間の生死についての印象的な短編もほかにいくつか入っている。「千歳の坂も」は医療が発達してしまった結果として、いつのまにかどうも不死性を獲得してしまった世界の話。医療処置を受けずに自然死を望む場合にむしろ老化税と死亡処理手続き積立金が徴収される……。こんな異様なのに妙にしみじみとしたいい話になるのが面白い。このなかではベストではないかと思う。

「Live me Me」は初出は同人誌。うーん、持ってると思うけど読んだ記憶がないなあ。突然の事故でほとんど脳死状態になった女性が最新医療によって奇跡的な復活を遂げ、遠隔操作ロボットで生活をはじめ、そして……という設定。結末はいまどきとなっては珍しくもない気もするが、個人的には気に入っている。

他。「Slowlife in Starship」は人嫌いで引きこもりの宇宙船乗りがぐだぐだと自己を肯定する話、というか。いわゆる宇宙船乗りというのは海洋船舶もののノリで荒らっぽいやつらというのがよくある話だけど、実際のところほとんど独りで何にもない空間をゆっくりと旅するところからイメージを逆転させた、といったところか。この短編集のなかではひとつ落ちる気がする。「アルワラの潮の音」はほかの長編の外伝。短い枚数でエンターテイメントしてて面白くてよい。