科学者として生き残る方法
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「科学は本当に好きだが、家族や科学以外のいろいろなことも、同程度あるいはそれ以上に大切なので、この有意義で楽しいけれども二次的な役割を選択することで妥協する」という道筋は、意識的に選択すべき道筋だ。(中略)こうしたケースの場合、「おのれを知る」とは、自分の運命や自分本来の望みが、自分が学部生のころに思い描いていたのとは本当は異なっているのかもしれないという状況を受け入れることである。
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そうした進路を選択し、レースを放棄してニッチを選ぶのであれば、この本には、社会学的な興味を充足するという以上の意味はない。
レースを放棄してアカデミックの道を捨てた俺がもっぱら社会学的な興味を充足する目的でこの本を読んでみたのだが、一読した結論としてはこの本は非常に素晴しいので大学院生はすべて読むべきだと思う。少なくとも理系分野なら参考になるところは多いはず。
この本は、現役の物理学者である二人の著者が書いた、アカデミックな世界のサバイバルガイド。共同研究は誰と組むべきか、論文や申請書はどう書くべきか、査読はどう機能しどう機能しないか、学会発表は何のためにあり、どう発表するべきか……そういったことがきちんと体系的に書かれてる。ま、そうやって挙げられるテクニックのたいていは博士課程にでもなれば指導教官とか先輩から断片的に学ぶことばかりだと思うけれど、まずきちんと書かれているのが良い点(実際、まえがきで著者も「もし、研究者にキャリア・エージェントやマネジャー役を務める人物がいたとしたら、本書は、そうした人物がしそうなアドバイスを要約したものだといえる」と書いているわけで)。
もちろん、そういう細かい話は分野や地域によってだいぶ変わる。本書でもたとえば北米と欧州ではアカデミックポストへの要求はだいぶ違うことが強調されるし、著者の一人は日本でしばらく仕事をしたことがあり、アカデミックポストのありようにだいぶカルチャーショックを受けたらしい。だからこの本の内容はそのままでは日本の事情にはぜんぜん適用できないわけだ。だけど、考え方はいっしょなので役立つ部分はだいぶ多いように見受けられた。
この本のもうひとつ良い点は、この本は非常に現実的なスタンスを取っていることだと思う。「そもそも研究者とは……」みたいな教条的な内容は少ない。かといって「教授の仕事は申請書を書くことだ」みたいなシニカルな視点でもない。科学者としてやりたいことは何なのかをまず見極めさせ、その上でその「やりたいこと」を具現化するために必要な作業を、それがなぜ必要なものなのか、効果的に遂行するにはどうしたらいいかを示す。査読者に対するテクニックとかそういった視点から書かれている。
終章で、そういう著者のスタンスをうまく説明している文章があった。ちょっと長いが引用。
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仕事として科学研究に従事するというのは、とても難しい活動だし、誰でもできるというものではない。この仕事は、成功に向けた固い決意、相当の忍耐、ひたむきな努力や場合によっては犠牲を必要とする。そして私たちの見解では、この仕事は、自分の仕事に対するとてつもない熱意や、その過程で必要となるさまざまな作業を楽しみながらこなしていける度量を前提としている。(中略)朝起きると、一日の刺激的な楽しみ(仕事)を思って気分がはずむ。自分が心底好きなことをやって報酬を得るというのは、得難い特権だと思う。もし、科学者という仕事に同様の思いを抱くことがないのだとすれば、先にも述べたように、別の仕事に就く方策をまじめに考えた方がいい。
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こうしたことを十分踏まえたうえで、科学というゲームが展開される現実世界を視野に入れておく必要がある。鮫や狼がうようよしている世界でナイーブなままでいることは、極めて危険だというしかない。(中略)自分が参加しているゲームのことを理解できなければ、自分の才能を十分に開花させることなど到底望めない。
著者たちは自分のキャリアに自覚を持てという。漫然と博士号を取得するだけでは実は生き残れない。本書の議論はすべてがそこから始まっている。どういうスタイルの科学者になるつもりなのか、そうなるために必要なテクニックは何か……。そこまで考えた上で、本書に書いてあるテクニックは役に立つ。だから、本書は博士号を取り立ての若い研究者やポスドクを対象読者として想定しているみたいだけど、むしろ大学院生のうちに読んでおくべきだと思う。
そういうわけで非常に固い内容の本なんだけど、ジョークもあってわりと楽しい。たとえば予算獲得に関する説明で、予算というのは申請されたなかから「優秀」な順に選ばれることになっている、という説明をして、
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ヌード写真と同じで、何が「優秀」なのかは定義が難しいにもかかわらず、誰もが口を揃えて「見ればわかる」という
という説明には笑った。下らんが至言だなあ。
ほかにも引用したい文章はいっぱいあるのだが、とりあえずはやめておこう。こういうのが好きな人にもおすすめ。
駅の構造がダンジョンめいているという話が一瞬だけ盛り上がっていたような気がするが、実際問題としてややこしいのは永田町と赤坂見附や国会議事堂と溜池山王といった都心の地下鉄あたりの地下構造であったり、新宿であるにしても新宿三丁目まで広がる巨大な地下道であったりするのではないかと思う。なぜそういった言及がなかったのか訝しんでいる。単独の駅で競うのがレギュレーションで、複数の駅が交錯する複雑さは興味の埒外なのだろうか。
しかし、思うに、新宿西口地下街から新宿三丁目まで含めた地下道のマップというのは、たとえばネットに一枚の画像として転がっていないような気がする。話題にならないのはレギュレーションというより、複雑さを一見して理解できないからではないかと思う。しかしだな、一見して理解できないから複雑なのではないかね。都心の地下鉄の連結具合の複雑さというのは、そういうタイプの複雑さである。
ところで蘇部健一の『六枚のとんかつ』という短編集に、この辺のあたりに近いアイディアを使った短編があってオレはあれはわりと好きです。本全体としてはおすすめしづらいが。
すっかり買いわすれたが先日買ってきた。
それにしても、このテのパズルはニコリ・コムでけっこう充足してしまっていて紙に書き込むのが何だかすっかり億劫になってしまった。人間、慣れるとダメになるもんだよな。紙は紙で独自の解き味があると思うけど、できればみんな PC でできるようにしてほしー。
もっともスリザーリンクとか数独みたいなタイプのパズルはコンピュータで実現しやすいのだが言葉や漢字を使うタイプのものはそう簡単でもないわけで(表示にしても入力にしても)、全移行は無理な話だろうケド。
あと今号は砂時計職人の話が面白かったよ。
最近読んだまんが。
『喰いしん坊!』[19] 喰ワン決着&新展開の「喰輪杯」編冒頭。登場したかと思ったらいきなり解散する五腹星とか、相変わらず何も考えてない先の読めない展開がすばらしいですね(棒読み)。
『ヴィンランド・サガ』[6] やー面白い。だんだん主人公だけ置いてけぼり感があるが……。おまけまんがも笑かせていただきました。なんか前にネットで似たような芸風のまんがを見かけた気がするのだが、また探してみたら見つからなかった。
『宇宙兄弟』[2] まあ、こういうまんが好きなんスよ。
けっきょくギネスはどうなったのだろう。
伝え聞いた話では、山手線で広告まで打ったらしいのだが(ところでなぜ広告とは「打つ」ものなのか)、いったい誰が企画をし、誰が金を出したんだろう? いろんな意味でスゲー。
RC を使ってたけどまだ正式版は家のマシンに入れてない。にしても RC は新しい版が出るたびに「更新があります」っていう通知があったわりに、今回なにもなかったのはよくわからぬ。
ちなみに RC を使ってた感じとしては、
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確かに速い。とくに GMail が
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でも Mac 版はそんな変わらないような。 Linux 版はとても速かった。……ま、この辺はビルドオプションやマシン環境にもよるか
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安定している
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でもメモリリークは完全には潰せてはいないような……
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その辺も深追いしてないのでよくわからず
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全般的によくできていると思う
http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20375599,00.htmふむ、とりあえず firefox の記録は800万程度だということがわかったが、いったいいかほどならギネスブックなのか? もともと記録はないから主張したらその人の勝ちという話?
まあどうでもいいが、ギネスの挑戦だとか山手線の広告だとか、ああいう感じは好きじゃないな。手弁当感があんまないからだろーか。ただまあ、日本では手弁当っぽい雰囲気を出す方がむしろダメだ。
(追記) http://wiredvision.jp/news/200806/2008061919.html ふむ、500万ダウンロードが当初の目標で、余裕で突破だったのか。
話はぜんぜん関係ないが、先日に twitter をやめたという記事を書いたら follow が増えたよ(トータルでの増減はわからない。アクセスしてないから)。
そういえばいまだにときどき follow が増えるんですが、最近はまったく twitter にアクセスしていません。完璧に読んでないし投稿もまったくしてません(たまにテスト書き込みはしているが)。別に理由はないのだけど、 twitter をやる気もないし時間もないといったあたりが理由といえば理由かな。
アカウントも消してないし、こちらからの follow を外してもいないのですが、アカウントを消すのは後で同名のユーザを作って乗っ取られる可能性があるから消しません。 follow を外すのは面倒なのでやってません。まあ、何かの実験で使うかもしれないし。
そういうわけなので、わたしを follow しても意味ないですよ、という表明でした。
とりあえずこんな感じか?
C
me.age++;
Java
me.addAge(1);
Objective-C
[self AddAgeBy: 1];
lisp
(setf (age me) (+1 (age me)))
Ocaml
let me = {me with age = me.age + 1};;
Haskell
modifyIORef (age me) (+1)
Erlang
me ! {add_age, 1}
Brainf*ck
+
おおむねの言語は C スタイルか Java スタイルで書ける気がするので大して面白くはならない気がする(たとえば Ruby には ++ はないのだがこの辺は C の変種と言いきってよかろう)。そういえば smalltalk 系列の記法を知らない。
ハルコイ
読んだ。確かに面白かった!
『ちはやふる』も面白かったけれど、あれはまあ、なんというか、ふつうの面白さというか。先の楽しみな良質のまんがでいいと思うけれども、なんだ、『ハルコイ』は一層すばらしいなあと。これはよいですね。
短編集なので紹介に困るけれども、どの話もスジとして取り出せばむしろありきたりな、王道なものだ(表題作の「ハルコイ」は捻りがあるけど)。けどこれが読んでみると面白い。うーん、うまく説明できなくてもどかしいのだが、単純にいえば完成度が高いということなのだと思う。
消えたと思われていた作家が見事なかたちで復活するというのは基本的に喜ばしいことで、とりもなおさずあんな風に消えてしまったはずの作家の新作がかくも面白いという状況には確かに快哉を叫ばずにはいられなくて。いやあ、いろんな意味でいいものを読んだ。
しかしこうなると作者の過去の作品を読みたくなるのが人情ってモンでして。
完結しちゃったねえ。『ホーリーランド』も終わっちゃったんでヤングアニマルは読むものがなくなりつつある今日このごろ。困った困った。
それにしても最後の3巻ぐらい、じっくり時間をかけて丁寧にお話を畳んでまして、「いつ終わるんだコノヤロー」な感じでしたがさすがに綺麗に畳んで終わりましたね。個人的な感想としては、単発のギャグっぽいエピソードが好きだったので、やけに長かった伝説のストミュー編あたりで一度ちょっと脱落しかけましたが(頑張っていい話を書いてみましたという感じがして、読んでてもぞもぞするんだよ)、やー終わってしまえば、あれもこれもよかったよかった。うんうん。
変愛小説集
岸本佐知子が好きそうな作家ばかり、変な愛についての短編を載せたアンソロジー。変てこで気にいったものもあるが、正直にいえばわけがわからなかったり、あんまり面白いとは思えないものもあり。しかし水準は高い。
いくつか気にかかったもの。
アリ・スミス「五月」
裏手のほうにある他人の家にはえた木に恋した人物の話。いかにも変でありながら、物語に入りやすい語り口と構成。物語はその人物と、その人物の恋人という2つの視点で語られるのだが、原文はどちらの性別ともとれるような文体であったらしい。それをこう訳すあたりが岸本佐知子らしさ。
ジュリア・スラヴィン「まる呑み」
主人公は不倫相手の庭師の男とキスをしたとき、なぜかそのまままる呑みにする。青年はそのまま胃袋で暴れたり悶着があったりし、それからなんとなく終わる(笑)。ヘンだけど説明しづらいなー。胃袋の中の男の下品な台詞が面白い。
A・M・ホームズ「リアル・ドール」
妹のバービー人形との恋愛。なぜかバービーは言葉をしゃべり、主人公と会話をはじめる。主人公も相当歪んだ性格なのだが、登場するキャラクターはほかもほとんど狂っている。
スコット・スナイダー「ブルー・ヨーデル」
男は車を駆り、飛行船を追う。そこには結婚を約束した女性が乗っているのだ……。追跡行と男の過去の回想で構成される短編だが、男の生業が樽に入ってナイアガラの瀧下りをする人を発見して救助隊に連絡する係であるとか、恋人とのなれそめが蝋人形館で女性が蝋人形のふりをして客をびっくりさせる仕事をしていたときに男がやってきたことであるとか、誰もおらず屋内に雲のある建物であるとか、そういう細かいところがいい。
ニコルソン・ベイカー「柿右衛門の器」
主人公の大伯母は英国の磁器が好きでいろいろ集めている。とくに牛骨の粉を混ぜた陶器が好き。長じて主人公が陶芸家となっても、主人公がつくった陶器を見ては「牛を感じない」と評したりする。主人公は本物の牛の骨を使った磁器をつくるべく、そのための牛を探す。オチはふつうかな。牛が評価基準になってる大伯母の台詞がいちいち面白い。
あと、イアン・フレイジャー「お母さん攻略法」は「それなんてエロマンガ」という話でした。タイトルそのまんますぎて絶句。
わたし、オタリーナですが。
気になったので買ってみた。出来はまあふつう。それにしてもこのテの本は多いねー。認知度が上がった印象が。
出来はまあふつうだが、読んでいて知り合いの女性(複数)の言動が脳裏をよぎったので、つまりそういう意味でよくできているのだろう。実体験でなければ描きえない何か、みたいな。しかしまーしょせんオレは男のおたくなので、内容はだいたい理解はできるし「あーいるいるこういう人」という感じはあるけど基本的に傍観者の視点なのであった。
作中にもあったけど、一般人とおたくのあいだに壁があるのだとすれば、男のおたくと女のおたくも川で分かたれてるんだよね(もっというと性別だけじゃないけどね)。「文化がちがーう!」みたいな感じ。
うーん、これはうまく説明できてないな。
オレはべつにああいうタイプのフィクションはぜんぜんまったく興味ないけど、それを愛好する人たちというのは知り合いにふつうにいたりするわけね。でまあそれなりに仲良くアニメソング限定でカラオケに行ったりするわけだが、でもまあこの人たちのことは根本的なところで理解できてないんだろうな、みたいな諦念があるわけです。ところが当然ながら向こうからしたらこっちもそうなんだなーというまなざしを感じたのはこの本が初めてという気がする。
たとえば面白かったのはロボットアニメ好きなオトコの話で、あれなんかはわりとオレの日常なんだけど(最近はそーでもないが)、そうか、あれってそんな新鮮でネタになるようなことなのか、と思ったりした。