うむ、これはあれですよ、ウォーターフォールの開発モデルのプロジェクトに流しのハッカーがやってきてアジャイルな開発手法で救う話なんですよ!(7割がた嘘なので本気にしないように)
Boing Boing の人として日本でも有名なコリイ・ドクトロウの第一長編にして、 Creative Commons (帰属・非商用・派生禁止) で公開されている 作品が本書。
作風は、ちょっとルーディ・ラッカーを思わせるところがある。けど、ラッカーには奇想があったのだけど、ドクトロウにはその奇想はない。テーマもテクノロジー描写も案外とふつうだ。
しかしその語り口、語られている内容はなんというかこう、「わかってる」感に満ちていて、少なくともこのページを読んでいるようなおたくたちにはウケるに違いないだろう。たとえば、同じようなポジションにいるチャールズ・ストロスは「まあわかっててヒネってるんだろうけど……」と思うところもあるのだけど、ドクトロウはまったく何のひねりもなく、いい味をちゃんと出せている。
ただ残念なのは訳。訳者の人も(あんまり僕は馴染みがないけど)キャリアのある人で、訳もちゃんとしていて読みやすいのだけど、↑で述べたような「雰囲気」についてはもうひとつ理解が浅いという印象があり、まったくイチャモンな気もするけれど、「ああ作者はわかっているのに訳者はちょっとわかってない!」と思われるような隔靴掻痒の感。そういうニュアンスはかなり削ぎ落とされてるんじゃないだろうか。
それに、設定はありふれている、と上で述べたけれども、グーグルランクがそのまま通貨単位となっているようなウッフィーという信用通貨の概念など、面白い設定もけっこうあって、ふつうに楽しめる。
ネットであれこれ活動しているナードたちにはオススメ。小粋な一冊です。
あーあとあれだ、最近の海外の長編SFというのはどうしてああ長いのかね、と思っていたので、この薄さは好感が持てますよ。オレはね、ベイリーの長編とかの長さが好きなのよ。この長さでこの面白さ。すばらしいです。+2